てんちゅーの備忘録

ニュース・身の回りの関心事を紹介する雑記ブログです。

令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(民訴・A評価)

今回は民訴です。

これで下4法も終わりですね。

 

答案枚数は3枚・A評価でした。

 

やはり設問2は正確には115条類推の場面だったみたいですね。

私は直接適用で書いてしまいましたが問題なかったようです。

 

第1 設問1

1まず、本件訴訟が通常共同訴訟(民事訴訟法(以下法名省略)38条)であればX2のみで訴訟追行できるのに対して固有必要的共同訴訟(40条)であれば当事者適格が認められずY主張のとおり却下されることとなる。そこで、通常共同訴訟と固有必要的共同訴訟の判断基準が問題となる。

(1)民事訴訟は実体権の実現・処分のプロセスであるから、実体法上の管理処分権の帰属態様によって決すべきであると解する。

 もっとも、当事者適格は訴訟法上の権能でもあるから訴訟政策的判断も必要である。

 そこで、通常共同訴訟か固有必要的共同訴訟かは実体法上の管理処分権の帰属態様を基準として訴訟法的観点から修正を図ることで判断すべきであると解する。

(2)本件において、本件訴訟物は売買契約に基づく目的物引渡請求権としての所有権移転登記手続請求権であるところ、本件土地は売買契約により、X1およびX2の共有(民法249条)となっている。したがって、本件訴えは共有権に基づく訴訟であり、X1およびX2が共同で行使しなければ認められないという性質を有する。そして、訴訟法的観点からは、X1およびX2が共同で訴訟追行しないと手続保障の充足が図れないといえる。

(3)よって、本件訴えは、固有必要的共同訴訟といえる。

2 そうだとすると、X1は訴訟追行しておらず、当事者適格が認められないから訴えは却下されるとも思える。

  もっとも、X2の子であり相続人たるA(民法887条)に訴訟承継(124条1項1号参照)させることで瑕疵を治癒できないか。

(1)そもそも訴訟承継するためには、本件訴えが訴訟係属している必要があるところ、X1は訴え提起後Yに訴状が送達前に死亡しているから訴訟係属していないのではないか問題となる。

ア 訴訟係属とは、特定の当事者間の特定の事件が特定の裁判所に審判されうる状態にあることをいう。

  そして、被告に訴状が送達された時点で特定の裁判所に審判されうる状態にあるといえる。

  よって、被告に訴状が送達された時点で訴訟係属すると解する。

イ 本件において、X1はYに訴状が送達される前に死亡しているから訴訟係属はしていない。

3 よって、Aは訴訟承継できないとも思える。

 しかし、上記のように解するとこれまで訴訟追行してきた本件訴えが無駄となり訴訟不経済となるから妥当ではない。

(1)この点、訴え提起後被告に訴状が送達される前に原告が死亡した場合には潜在的な訴訟係属が生じていたと解することも可能である。

 そこで、かかる場合には当然承継の根拠条文である124条1項1号の趣旨を類推適用することで訴訟承継できると解する。

(2)本件においても、X1は訴え提起後Yに訴状が送達される前に死亡しているから潜在的な訴訟係属が生じていたといえる。

(3)よって、Aは本件訴えを訴訟承継することができる。

4 以上より、X2側としてはAに本件訴えを訴訟承継させるという対応をとるべきである。

第2 設問2

 既判力は前訴判決の判決主文たる権利・法律関係に生じるところ(114条1項)、売買契約の存在は前訴の主要事実であるから既判力が生じ、Zの主張は前訴判決により排斥されるとの主張が考えられる。

 では、Zに既判力が拡張されるか。

1 既判力の正当化根拠は十分な手続保障に基づく自己責任であるところ、かかる責任を負いうるのは当事者のみである。

  したがって、既判力は当事者にのみ及ぶのが原則である。(115条1項)

2 もっともZは「目的物を所持する者」(115条1項4号)にあたり、既判力が拡張されないか。

(1)「目的物を所持する者」に既判力が拡張される根拠は、かかる者は固有の法的利益を有さないから手続保障を及ぼす必要がない点にある。

そこで。「目的物を所持する者」とは固有の法的利益を有さず、専ら当事者のために目的物を所持する者をいうと解する。

(2) 本件において、ZはYから贈与(民法549条)を受け所有権移転登記をしているところ、かかる贈与は強制執行を免れる目的でBとZ間の通謀によりなされたものであるから、通謀虚偽表示(民法94条1項)にあたり無効である。したがって、Zは無権利者であり、本件土地を所有する固有の法的利益は認められない。

(3)よって、Zは固有の法的利益を有さず、専ら当事者たるYのために目的物を所持する者といえ「目的物を所持する者」といえる・

3 以上より、Zの主張は前訴判決によって排斥されるべきである。

以上

 

以下、再現時コメント

自己評価 A

まずは民訴から先に解いた。

直前答練の第一問に当事者の確定がらみの問題が出ており、その時は手も足も出なかったので復習しといてよかったと心底思った。

設問2は「信義則違反」および「争点効」にはふれるなとのことだったので、主観的範囲の問題だということは気づけた。

しかし、判決前にZに贈与しているのに直接適用にしてしまい、時的限界も書くべきだったと思う。

民訴は苦手な受験生も多いと聞くので相対的に上位に入っていればと思う。

令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(刑訴・D評価)

今回は刑訴です。

 

ケアレスミスが大きく響いた科目といっていいと思います。

 

答案枚数は3枚・D評価でした。

 

丁寧にあてはめもできた思った科目なのでかなり悔しいです。

 

敗因分析をしっかりしなければいけない科目だと思います。

 

第一 本件勾留が適法と言えるためには、逮捕が先行している必要がある。(逮捕前置主義)(刑事訴訟法(以下法名省略)207条1項本文)

もっとも、本件では通常逮捕(199条)がなされる前にPらは甲を任意同行している。かかる任意同行は適法といえるか。

1 この点、任意同行は明文で規定されていないが、被疑者のプライバシーや名誉に配慮する点で有益といえる。

  そこで、被疑者の真の同意があれば任意処分(197条1項本文)として適法であると解する。但し、被疑者の真の同意がなければ、任意同行に名を借りた実質逮捕にあたり令状主義(憲法35条前段)に反し違法であると解する。

  具体的には任意同行を求めた時間や同行の態様、同行の必要性等を総合考慮して判断すべきである。

2 本件において、確かに、本件事件から極めて近接した時点で本件事件の被害品であるV名義のクレジットカードを所持しているから、Pらは甲から詳しく話を聞く必要があったといえる。

  しかし、同行を求めたのは午前3時という深夜であり、甲が「俺はいかないぞ。」と任意同行に応じない意思を明確に表現しているのに対して、Qが先にパトカーの後部座席に乗り込み、甲の片腕を車内から引っ張り、Pが甲の背中を押し。後部座席中央に甲を座らせ、その両側にPとQが功を挟むようにして座るという甲の移動の自由を強く制限するような態様で同行がなされている。

  かかる事情に照らせば、甲の同意は認められないと解する。

3 よって、本件任意同行は実質逮捕にあたり令状主義に反し違法である。

第2 では先行する逮捕が違法な場合に勾留が認められるか。

1 逮捕前置主義の趣旨は2段階の要件審査による司法的抑制の徹底にある。そうだとすると先行する逮捕が適法であることを前提としているといえる。

  もっとも違法性が軽微な場合にまで勾留が認められないとするのは捜査の必要性を害し妥当でない。

  そこで先行する逮捕の違法性が重大な場合にのみ勾留は認められないと解する。

2 本件において、甲は窃盗事件という「長期三年以上の懲役…にあたる罪」(210条1項)にあたる被疑者であり、被害品を所持しているから「罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由」が認められる。さらに、甲は、「仕事も家もなく、寝泊まりする場所を探しているところだ。」とPらに答えていることからその場で身柄を確保しなければ逃亡のおそれが認められるから「急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」といえる。

  よって本件任意同行がなされた時点で緊急逮捕の要件が備わっていたといえるから先行する逮捕の違法性は重大とはいえない。

第3 そうだとしても、勾留は身柄拘束期間(203条以下)の範囲内か。

1 この点、違法な実質逮捕がなされた場合、かかる実質逮捕の時点を基準として算定すべきである。

2 本件において、実質逮捕は令和元年6月5日午前3時なされているところ、同月7日午前8時30分H地方検察庁に送致され、同日午後1時に勾留請求されている。勾留請求は身体拘束時から72時間以内になされているものの、検察官への送致は48時間を超えている。(203条1項)

3 よって、身柄拘束期間の範囲内とはいえない。

第4 以上より、甲の勾留は違法である。

以上

 

以下、再現時コメント

自己評価 B

問研の問題まんまだと思った。受験生のほとんどができていると思う。職務質問の適法性は聞かれてないと思ったので書かなかったが1行くらいで軽く触れても良かったかもしれない。

ほとんどできたと思ったのに最後の実質逮捕の日にちを間違えるという痛恨のケアレスミス。試験中あれほど確認したはずなのに。これがなければAいけたかもしれないと思うとめちゃくちゃ悔しい。

令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(商法・F評価)

今回は商法です。

 

2大やらかし科目のうちの一つです。

 

民事系は特に力を入れないとなあ。

 

答案枚数は2枚弱・F評価でした。

せめてE評価ぐらいはあるかなあと思ったのですがキビシイですね・・・。

 

第1 設問2

Dは丙社が甲社の株式40株を有しており議決権40個を有するにも関わらず、丙社の議決権の行使を認めずなされた本件株主総会決議は会社法(以下法名省略)308条1項に反するから「決議の方法が法令…に違反」(831条1項1号前段)するとして取り消されるべきと主張することが考えられる。

かかる主張は認められるか。

1 まず、丙社は甲社の株主たる地位を取得したといえるか。

  丙社は乙社から甲社株式を承継しているところ、非公開会社である甲社から承認を得ていないから、かかる承継は甲社との関係では無効であり丙社は株主たる地位を取得できないのが原則である。

  もっとも、丙社は甲社に対して株主名簿の書換請求をして、株式の取得につき承認請求(137条1項)をしているところ、甲社は承認を拒絶している。その場合には、40日以内に会社による買取りの通知(140条1項1号、141条)または指定買取人による買取りの通知(140条4項、142条)をしなければならないところ(145条1項2号)、甲社は承認を拒絶するのみでかかる通知をしていない。よって、甲社は丙社からの承認請求を承認したとみなされる。(145条1項柱書)

  したがって、丙社は甲社の株主たる地位を取得したといえる。

2 しかし、丙社甲社株式につき名簿書換(130条)をしていないから甲社に対して株主たる地位を対抗できないのではないか。

(1)130条の趣旨は、会社が株主からの名簿書換請求に応じる義務を負っていることを前提として、絶えず変動しうる株主の権利行使を円滑に処理するための事務処理上の便宜を図る点にある。

そして、かかる義務を怠っているにも関わらず、名簿書換がなされていないことを理由に株主の権利行使を認めないのは信義則(民法1条2項)に反する。

よって、株主たる地位を取得している者は、株式の名義書換をしていなくとも株主たる地位を会社に対抗できると解する。

(2)本件において、上述のとおり丙社は甲社の株主たる地位を取得したといえるところ、名簿書換をしていなくとも甲社に対し、株主たる地位を対抗できると解する。

3 そうだとすると、丙社は甲社の株式を40株有するから本件株主総会の時点で40個の議決権を有していたと解することができ、丙社の議決権行使は認められなければならなかったといえる。

  それにも関わらず、本件株主総会決議に際して、丙社の議決権行使が認められていない。

 よって、本件株主総会決議は会社法(以下法名省略)308条1項に反するから「決議の方法が法令…に違反」するといえる。

 よって、Dの主張は認められる。

4 なお、本件株主総会決議は行使された議決権60個のうち40個の賛成により成立しており、丙社の議決権40個が行使されていれば反対は60個となり議案が不成立となったと解することができる。

よって、「違反する事実が重大でなく」(831条2項)とはいえないから、裁判所は裁量棄却することはできない。

第2 設問1

Dは本件取締役会に際して、決議事項として予定されていなかった事項を決議したことから本件取締役会決議は無効であると主張することが考えられる。

そこで、取締役会の決議にあたり、決議事項として予定されていない事項を決議することができるか問題となる。

1 この点、経営の専門家たる取締役は会社と委任契約を締結しており、会社に対して忠実義務(355条)を負っているところ、会社の経営に全力を尽くさなければならないと解する。

したがって、取締役会の決議にあたり、決議として予定されていない事項を決議することができると解する。

2 本件においても、本件取締役会決議において、決議事項として予定されていなかった事項を決議することができる。

3 よって、Dの主張は認められない。

以上

 

以下、再現時コメント

 

自己評価 D

民事系で最後にといた。初めて設問2から記入。

書き始めのところを答案用紙上大きく修正したことで低評価となる可能性大。決議の効力ということで無効の訴えで書き始めたが、よくよく考えると決議内容に法令違反があるわけではないので取消の訴えに慌てて変更。

設問1は何書けばいいかわからなくなりテンパった結果ふわふわした解答に。

今思えば特別利害関係書けばいいだけなのにと大きく悔やむ。

 

令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(行政法・C評価)

今回は行政法です。

 

答案枚数は3枚半程度・C評価でした。

 

今回は設問2の出来具合で差がついたのだと思います。

 

でも構成自体やったことなかったからなあ…。

 

未知の問題が出た場合の対処法がまだまだですね。

 

第1 Cは本件許可処分の名宛人ではないから原告適格は認められないとも思える。

もっとも、Cは「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法(以下「行訴法」と略称)9条1項)にあたり、原告適格を有するとの主張が考えられる。

1 「法律上の利益を有する者」とは、自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

  そして、当該処分を定めた根拠法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解する場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益にあたると解する。

Cが求める利益は、周辺の景観を守る権利いわゆる景観利益とCの安眠を妨げないという身体の健康を害されない権利であるといえる。

ここで、A県としては景観利益は公益にあたり保護されないから法律上保護された利益にあたらないという反論と身体の健康を外さない権利は根拠法規が配慮する利益ではないから法律上保護された利益にあたらないとの反論をすることが考えられる。

以下行訴法9条2項に従って検討する。

2 景観利益について

 (1)まず、本件処分は条例6条1項に基づいてなされているからかかる条項は根拠法規といえる。そして、条例は許可基準を規則に委任(9条)しているところ、規則は10条において許可基準を規定している。許可基準は「良好な景観の形成を阻害」(規則別表第4第1号)するものでないことを要求し、条例も「良好な景観を形成」を目的(1条)としているから根拠法規は景観利益に配慮していると解することができる。

 もっとも、景観利益は国民一般が享受すべきものであるという性質を有し、また条例には周辺の住民の手続参加を要求する条項は規定されてないことを鑑みると景観利益は専ら公益として保護されていると解する。

 よって、景観利益は法律上保護された利益にあたらない。

(2)したがって、Cは景観利益を理由として原告適格を有すると主張することはできない。

3 安眠を妨げないという身体の健康を害されない権利について

 (1)本件許可処分の根拠法規は上述のとおりであるところ、確かに規則は身体の健康について配慮する規定は見当たらない。しかし、条例は、「良好な景観を形成」するほかに「公衆に対する危害を防止」することをも目的としているから根拠法規は周辺住民の身体の健康について配慮していると解することができる。

 よって、身体の健康は法律上保護された利益にあたると解する。

 そして、身体の健康は広告物が設置された場所に近ければ近いほど害される性質を有する利益である。

 そこで、広告物の設置によって身体の健康に重大かつ直接的な影響を受ける者は「法律上の利益を有する者」として原告適格を有すると解する。

(2)本件において、Cは本件申請地点の隣地に居住しているから広告物の設置によって安眠を害するという身体の健康に重大かつ直接的な影響を受ける者といえる・

4 よって、Cは「法律上の利益を有する者」にあたり、Cは原告適格を有するといえる。

第2 Bとしては本件基準1の規定は、裁量の逸脱・濫用(行訴法30条)にあたるから条例に反し無効であると主張することが考えられる。

1 まず、条例は、6条2号により「交通の安全を妨げるおそれ」という抽象的な文言を用いており、「交通の安全」の判断については専門技術的判断を要する。

  よって、要件裁量が認められる。

2 では、裁量の逸脱・濫用といえるか。

  裁量の逸脱・濫用といえるには判断の過程及び結果に重要な事実の基礎を欠くかまたは社会通念上著しく妥当の欠くと認められる必要があると解する。

  本件において、本件基準1は広告物から鉄道等なでの距離が100メートル以上であることを要求するが、鉄道の線路が地下にあり電車内から広告物等を見通せないばあいもある。そのような場合には「交通の安全」(条例6条2号)を害することはないといえる。そのような場合であっても本件基準1は一律に線路から100メートル以上であることを要求しているから重要な事実の基礎を欠くといえる。

3 よって、Bとしては本件基準1は裁量の逸脱・濫用にあたり条例に反し無効であると主張すべきである。

以上

 

以下、再現時コメント

自己評価 C

設問1の原告適格はそれなりにかけた。

しかし、時間がかかりすぎたので構成をもっとコンパクトに書き出しをはやくする必要がある。

設問2は構成がわからず結局裁量の逸脱・濫用のお馴染みのフレームで書いたので点は全く入らないと思う。

Dくらいな気もするが期待を込めてC。

 

令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(刑法・A評価)

今回は刑法です。

 

これで上3法は終わりです。

 

答案枚数は3枚半程度・A評価(ビックリ!)でした。

 

全答案の中で一番分量があったように思います。

それくらい刑法は時間との闘いでした。

 

再現時では強盗利得罪を基礎とした強盗殺人罪に触れなかったことをものすごく悔やみましたが結果的にそこまで痛手にはならなかったようです。

 

第1 本件土地をA売却した行為につき、業務上横領罪(刑法(以下省略)253条)が成立しないか。

1 まず「業務」とは委託を受けて他人の財物を保管することを業とする職業または職務をいうところ、甲は不動産業者を経営しており、Vから委託を受けて本件土地を占有しているから「業務」といえる。

2 次に、「占有」とは事実上の占有のみならず法律上の占有も含むと解するところ、甲はVから本件土地の登記済証や白紙委任状等を預かっていることから本件土地を法律上占有しているといえ「占有」にあたる。

3 では、「横領」したといえるか。「横領」とは不法領得の意思の発現たる行為をいうところ、不法領得の意思をいかに解するか問題となる。

(1) この点、毀棄隠匿でも横領罪の保護法益を害することは可能であるから不法領得の意思とは委託の任務に背いて他人の財物を所有者でなければできないような処分をする意思をいうと解する。

(2) 本件において、甲は本件土地に抵当権を設定する権限しか有しておらず、本件土地を売却することは所有者たるVでなければできない処分であるといえる。

 したがって、甲のかかる行為は不法領得の意思の発現たる行為といえ「横領」にあたる。

4 よって、甲に対し、業務上横領罪が成立する。

第2 本件土地の売買契約書に「V代理人甲」と署名した行為につき有印私文書偽造罪(159条1項)が成立しないか。

1 まず、「偽造」といえるか。

(1)「偽造」とは、名義人と作成者の人格の同一性を偽る行為をいう。そして、名義人とは当該文書から理解される意思または観念の表示主体という。

 判例は、代理人による署名が行われた場合、名義人は本人であるとする。

 しかし、文書の表示主体は代理人であると解されるから判例には賛成できない。

 そもそも、文書偽造罪の保護法益は文書に対する公共の信用の保護にある。

 そこで、代理人という肩書・資格が公共の信用の基礎となっている場合には代理人という肩書付きの者が名義人であり代理人という肩書のない者が作成者であると解しここに人格の同一性に偽りがあると解する。

(2) 本件において、Aは甲の話を信用して本件土地を購入することとしているので、代理人という肩書が公共の信用の基礎となっていると解する。

したがって本件土地の売買契約書の名義人は本件土地の売却する権限を有する代理人甲であり、作成者は本件土地の売却する権限を有しない代理人甲であるといえる。

 よって、名義人と作成者の人格の同一性を偽るといえるから「偽造」にあたる。

2 そして、「行使の目的」とは偽造文書を真正な文書として認識させ、または認識可能な状態におくことをいうところ、甲はAに本件土地の売買契約書を交付して、真正な文書として認識させているから「行使の目的」が認められる。

3 また、本件土地の売買契約書は「権利、義務…に関する文書」といえる。

4 よって、甲に対し、有印私文書偽造罪が成立する。

第3 本件土地の売買契約書をAに交付した行為につき、偽造私文書行使罪(161条1項)が成立する。

第4 Vの首を背後から力いっぱいロープで絞めた行為につき殺人罪(199条)が成立しないか。

1 まず、首をロープで絞める行為は人の生命に対して現実的危険性を有する行為といえるから殺人罪の実行行為にあたる。

2 もっともVは溺死しているから因果関係が認められないのではないか。

 ⑴ 因果関係の有無については、条件関係に加えて、行為の危険性が結果へと現実化したか否かによって判断すべきである。

 ⑵ 本件において、甲がVの首をロープで絞めなければVは溺死しなかったと言えるから条件関係が認められる。

   そして、被害者を殺害した犯人が被害者を海に遺棄することは十分にあり得るといえるから、Vが溺死するという結果は首を絞めるという行為の中に含まれていたといえる。

   よって、行為の危険性が結果へと現実化したといえ、因果関係が認められる。

3 そうだとしても、甲が意図した因果関係とは異なる。そこで、故意(38条2項)が認められないのではないか。因果関係の錯誤の処理が問題となる

(1)この点、因果関係も客観的構成要件要素であるから故意の対象となると解する。

そして、故意の本質は規範に直面し反対動機の形成が可能であったにも関わらず、あえて行為に及んだことに対して強い道義的非難が可能な点にある。

そこで、認識していた事実と実際に発生した事実が構成要件評価の点で一致していれば、故意が認められると解する。

具体的には、刑法上の因果関係が一致すればよいと解する。

  ⑵ 本件において、甲が認識していたロープで絞められて死ぬという事実と溺死するという事実はともに「人が死ぬ」という点で刑法上の因果関係が一致するといえる。

 よって、故意が認められる。

4 したがって、甲に対し殺人罪が成立する。

第5 Vを海に落とした行為は客観的には殺人罪の構成要件に該当するものの、甲は死

体棄罪(190条)の故意しか有しないから殺人罪は成立しない。(38条2項)

   もっとも重過失致死罪(211条後段)が成立し、上述の殺人罪に吸収される。

第6 以上より、甲に対し、業務上横領罪、有印私文書偽造罪、同行使罪、殺人罪が成立し、これらは併合罪(45条前段)となる。

以上

 

以下、再現時コメント

自己評価 D

刑訴から先に解いて、残り75分あったので、それなりに時間はあったと思う。

しかし、結局時間が足りず、罪責検討書く時点で残り20秒ほどだったので牽連犯ともかけず、全部併合罪としてしまった。

重過失致死罪のところももう少し書きたかった。

余裕があると思い刑訴終了時にトイレに立ったのが結果的に裏目に出た。

私文書偽造の論証はもう少し短くてよかった。

そして、強盗殺人罪を落とし殺人罪としたのは非常に痛い。

基本的論点であると思われるので相対評価でグッと下がってしまったと思われる。

今後はどうすれば論点落としがなくなるのか検討することが最重要課題といえる。

 

令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(民法・F評価)

憲法の次は民法です。

 

かなり日付が開いてしまいましたが、今日からまたコツコツとアップしていきたいと思います。

 

 3枚程度、F評価でした。

 民法でやらかしがなければ合格していたのかと思うと悔やんでも悔やみきれないところがあります。

ですが、それも実力のうち。

来年こそは。

 

第1 設問1 

1 DはCに対して所有権(民法(以下省略)206条)に基づく返還請求権としての本件建物収去本件土地明渡請求をしていることが考えられる。

(1)まず、Dは本件土地の所有権を有するか。

この点、Aは本件土地をCに贈与(549条)しており、Aの子であるBはAの財産を包括承継するから(887条、896条)Bは甲土地に対して無権利者となる。

したがって、BD間の抵当権設定契約は無効であり、かかる抵当権に基づいた競売も無効となり、Dは所有権を取得できないのが原則である。

(2)もっとも、DはB名義の登記を信頼して抵当権を設定している。そこで94条2項によりDB間の抵当権設定契約は有効となり、その結果Dは所有権を取得しないか。

ア そもそもDB間には通謀が存在しないから94条1項を直接適用することはできない。

 しかし、94条2項の趣旨は虚偽の外観作出につき帰責性ある権利者の犠牲の下、かかる外観を信頼した第三者を保護するという権利外観法理にある。

 そこで、①虚偽の外観②権利者の帰責性③第三者の信頼という要件を満たせば94条2項を類推適用できると解する。

 そして、権利者の帰責性に照らし「善意」とは単純善意というと解する。

  イ  本件において、B名義の登記という虚偽の登記が存在する。次に、Aから贈与を受けたにも関わらず、長年登記することを怠ったというCの帰責性が認められる。そして、DはCの贈与を知らなかったから善意といえる。

  ウ  よって、94条2項によりDB間の抵当権設定契約は有効となり、その結果Dは所有権を取得する。

(3)したがって、DはCの登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者といえ、177条の「第三者」にあたるからCはDに対して抵当権設定登記を対抗できない。 

よって、Dの請求は認められるとも思える。

2 これに対して、Cは本件建物を存続させるための法律上の占有権原を主張することができるか。

(1)まず、Cは本件土地を時効取得(162条1項、2項)したと主張することが考えられる。

しかし、贈与を受けた平成20年4月1日から「10年間」経過していないからかかる主張は認められない。

(2)次に、Cは本件土地の法定地上権(388条)を取得したと主張することが考えられる。

ア 法定地上権の趣旨は建物収去に伴う社会経済上の不利益を回避する点にある。

 そこで、①抵当権設定時に土地上に建物が存在したこと②土地と建物の所有権を同一人が有していたこと③土地または建物に抵当権が設定されたこと④抵当権の実行により土地と建物の所有権が別人に帰することになったことという要件を満たせば建物の所有権を有する者は法定地上権を取得すると解する。

イ 本件において、抵当権設定時に本件土地上に本件建物が存在していた。また。本件土地と本件建物の所有権は共に競売までC所有だった。そして、本件土地に抵当権が設定されている。さらに競売によって本件土地はD所有、本件建物はC所有となっている。

ウ よってCは法定地上権を取得する。

3 以上より、DのCに対する請求は認められない。

 

第2 設問2 

CはDに対して、所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権抹消登記請求をしていると考えられる。

1 上述のとおりDは177条の「第三者」にあたるからCは本件土地に対する抵当権設定をDに対抗できないのが原則である。

2 もっとも、Cは抵当権設定当時にDは本件土地上にCが本件建物を建築していたことを知っていたからいわゆる背信的悪意者にあたり「第三者」にあたらないと主張することが考えられる。

(1)この点、177条は自由競争を前提とするから悪意者はなお保護に値する。

もっとも、自由競争の範囲を逸脱する背信的悪意者については信義則(1条2項)上、登記の欠缺を主張する正当な利益を有さず「第三者」にあたらないと解する。

(2)本件において、確かに、Dは抵当権設定時に本件土地上にCが本件建物を所有して居住していたことを知っていた。しかし、BからCは本件土地を無償で借りているに過ぎないとの説明を受けて抵当権設定をしているからCに対する嫌がらせ目的等は有していなかったといえる。

よって、Dは背信的悪意者にあたらず、「第三者」といえる。

3 以上より、Cのかかる請求は認められない。

以上

 

以下再現時コメント

自己評価 F

現場ではできたと思ったけど思いっきりやらかした科目の一つ。

よくよく考えてみると2重譲渡が問題となるのだから94条2項類推なんて問題になる訳がない。

論点思考になってしまっていた。

そして、設問2も時効取得がかけていない。

設問1では時効取得に触れたのになぜ設問2では検討しなかったのか…。

強いていうなら法定地上権に触れられただけましかなという程度である。

令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(憲法・D評価)

今回から書き溜めていた再現答案を掲載していきたいと思います。

 

恥さらしに近いですが、この答案でこんなもんかというのを感じて頂けると幸いです。

 

受験してから1週間以内に書き起こしているので再現度は高いほうかと思います。

 

まずは憲法からです。

 

2枚と3行程度だったと思います。

 

D評価でした。

 

第1 乙中学校の校長が一切代替措置をとらなかったことはXのB教の戒律を守る自由を侵害し違憲ではないか。

1 まず、B教の戒律を守るか否かは宗教的行為の自由としての側面を有するから憲法(以下省略)20条1項の信教の自由として保障されると解する。

2 そして、XはA国出身の外国人であるが、信教の自由は外国人であるか否かを問わず等しく保障される性質を有する権利であるから、権利の性質上Xの上記自由は憲法上保障される。

第2 そして、Xが水泳の授業に参加せずそれに対する代替措置がなかったことでXの保健体育の評価は「2」と低くされており、それによって県立高校の入学試験の合格最低点に僅かに及ばず不合格になるという不利益を受けている。よって、Xの上記自由は事実上制約されている。

第3 では、かかる制約は正当か。

 信教の自由は、憲法上保障される精神的自由の中でも特に重要な権利である。

 この点、保健体育の成績が低く評価されてもXがB教の戒律を守る自由に対する間接的・付随的制約にすぎないとの反論が考えられる。

 しかし、XがB教の戒律を守り、水泳授業に不参加であったからこそ保健体育の成績評価が低くつけられているのであるから保健体育の成績評価を高くつけてもらうためにはB教の戒律を破る他ないといえる。よって、Xの上記自由に対する直接的制約といえる。

 もっとも、教育の中立性の確保も公教育のうえでは重要といえる。

 そこで、目的が重要で、目的と手段の間に実質的関連性が認められれば許されると解する。

1 本件措置の目的は、教育の中立性の確保にある。かかる目的は全国に一定水準を確保し、教育の機会均等を図るという観点から重要といえる。

2 そして、代替措置をとらなかったことが政教分離原則(20条1項後段、3項)に反するといえるならば代替措置をとらなかったことにつき目的と手段の間に実質的関連性が認められるといえる。

そこで、代替措置をとることは政教分離原則に反するといえるか。

(1)政教分離原則とは国家の非宗教性ないし宗教的中立性をいうところ、その趣旨は少数者の宗教の自由の確保にある。したがって、憲法は国家と宗教の完全分離を理想としている。

しかし、完全分離を要求すると、様々な不都合が生じる。

そこで、行為の目的が宗教的意義を有し、その効果が宗教に対する援助・助長・促進または圧迫・干渉等となる場合には政教分離に反すると解する。

(2)本件において、代替措置をとることの目的は信仰に配慮することにある。B教という特定の宗教に配慮することによって国家とB教を優遇するものといえるから目的が宗教的意義を有するといえる。

そして、代替措置をとることはB教に対する援助・助長・促進にあたるとの反論が考えられる。しかし、レポートを提出させることで不公平は是正されるといえるからかかる反論はあたらない。

 もっとも、代替措置の要望が真に信仰を理由とするものなのかどうかの判断が困難であるから不公平は是正されるとはいえないとの反論が考えられる。

 しかし、提出されたレポートの内容を確認することで、その生徒がどの程度真摯に授業に参加していたのかを判断することは可能である。

 よって、政教分離原則に反せず、実質的関連性に反せず、違憲である。

                                     以上

 

以下、再現時のコメント

自己評価F

実質の途中答案。

行政法解いた時点で残り時間50分でとにかく時間がなかった。

行政法に時間かけすぎたことを反省。ほとんど下書きなしに書き始める。

再現書いて思うけど最後のほうは支離滅裂で文として成立してないなあ…。

今考えると代替措置の有無と成績が低くつけられたことは分けて検討するほうがスッキリかけたような気がする。

なんとかFを免れたらと思うがたぶんFだろうなあ。