令和元年度司法試験予備試験論文再現答案(商法・F評価)
今回は商法です。
2大やらかし科目のうちの一つです。
民事系は特に力を入れないとなあ。
答案枚数は2枚弱・F評価でした。
せめてE評価ぐらいはあるかなあと思ったのですがキビシイですね・・・。
第1 設問2
Dは丙社が甲社の株式40株を有しており議決権40個を有するにも関わらず、丙社の議決権の行使を認めずなされた本件株主総会決議は会社法(以下法名省略)308条1項に反するから「決議の方法が法令…に違反」(831条1項1号前段)するとして取り消されるべきと主張することが考えられる。
かかる主張は認められるか。
1 まず、丙社は甲社の株主たる地位を取得したといえるか。
丙社は乙社から甲社株式を承継しているところ、非公開会社である甲社から承認を得ていないから、かかる承継は甲社との関係では無効であり丙社は株主たる地位を取得できないのが原則である。
もっとも、丙社は甲社に対して株主名簿の書換請求をして、株式の取得につき承認請求(137条1項)をしているところ、甲社は承認を拒絶している。その場合には、40日以内に会社による買取りの通知(140条1項1号、141条)または指定買取人による買取りの通知(140条4項、142条)をしなければならないところ(145条1項2号)、甲社は承認を拒絶するのみでかかる通知をしていない。よって、甲社は丙社からの承認請求を承認したとみなされる。(145条1項柱書)
したがって、丙社は甲社の株主たる地位を取得したといえる。
2 しかし、丙社甲社株式につき名簿書換(130条)をしていないから甲社に対して株主たる地位を対抗できないのではないか。
(1)130条の趣旨は、会社が株主からの名簿書換請求に応じる義務を負っていることを前提として、絶えず変動しうる株主の権利行使を円滑に処理するための事務処理上の便宜を図る点にある。
そして、かかる義務を怠っているにも関わらず、名簿書換がなされていないことを理由に株主の権利行使を認めないのは信義則(民法1条2項)に反する。
よって、株主たる地位を取得している者は、株式の名義書換をしていなくとも株主たる地位を会社に対抗できると解する。
(2)本件において、上述のとおり丙社は甲社の株主たる地位を取得したといえるところ、名簿書換をしていなくとも甲社に対し、株主たる地位を対抗できると解する。
3 そうだとすると、丙社は甲社の株式を40株有するから本件株主総会の時点で40個の議決権を有していたと解することができ、丙社の議決権行使は認められなければならなかったといえる。
それにも関わらず、本件株主総会決議に際して、丙社の議決権行使が認められていない。
よって、本件株主総会決議は会社法(以下法名省略)308条1項に反するから「決議の方法が法令…に違反」するといえる。
よって、Dの主張は認められる。
4 なお、本件株主総会決議は行使された議決権60個のうち40個の賛成により成立しており、丙社の議決権40個が行使されていれば反対は60個となり議案が不成立となったと解することができる。
よって、「違反する事実が重大でなく」(831条2項)とはいえないから、裁判所は裁量棄却することはできない。
第2 設問1
Dは本件取締役会に際して、決議事項として予定されていなかった事項を決議したことから本件取締役会決議は無効であると主張することが考えられる。
そこで、取締役会の決議にあたり、決議事項として予定されていない事項を決議することができるか問題となる。
1 この点、経営の専門家たる取締役は会社と委任契約を締結しており、会社に対して忠実義務(355条)を負っているところ、会社の経営に全力を尽くさなければならないと解する。
したがって、取締役会の決議にあたり、決議として予定されていない事項を決議することができると解する。
2 本件においても、本件取締役会決議において、決議事項として予定されていなかった事項を決議することができる。
3 よって、Dの主張は認められない。
以上
以下、再現時コメント
自己評価 D
民事系で最後にといた。初めて設問2から記入。
書き始めのところを答案用紙上大きく修正したことで低評価となる可能性大。決議の効力ということで無効の訴えで書き始めたが、よくよく考えると決議内容に法令違反があるわけではないので取消の訴えに慌てて変更。
設問1は何書けばいいかわからなくなりテンパった結果ふわふわした解答に。
今思えば特別利害関係書けばいいだけなのにと大きく悔やむ。