てんちゅーの備忘録

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令和3年度司法試験予備試験再現答案(刑法)

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今年度も懲りずに受験してきましたので、今日からぼちぼち再現答案あげていきます。

 

まずは、刑法です。

 

第1 乙の罪責

乙が、Xを、殺意を持って両手で首を強く絞めつけ失神させ、その後も首を締め続けた行為について殺人罪(刑法(以下法名省略)199条) が成立し、乙はかかる罪責を負う。

第2 甲の罪責

1 Y宅に忍び込みYが保管していた本件ダンボール箱を自宅に持ち帰った行為につき窃盗罪(235条)が成立しないか。

まず、本件ダンボール箱は甲の所有であるところ、窃盗罪が成立しないのではないか問題となる。

この点、財産犯の保護法益を所有権と解し、窃盗罪は成立しないとの見解がある。

しかし、複雑化した現代社会において、現に占有しているという財産的秩序の維持を図るという観点から、財産版の保護法益は占有それ自体であると解し、自己の所有物であっても窃盗罪が成立しうると解する。

よって、自己の所有物たる本件段ボール箱を持ち帰った行為にも窃盗罪は成立しうる。

そして、Yの意思に反して本件ダンボール箱の占有を自己に移していることから「窃取した」したと言える。

また、甲には、権利者の意志を排除し、その物につき、その経済的用法に従い利用処分する意思たる不法領得の意思が認められる。

以上より甲に窃盗罪が成立する。

2 次に、本件帳簿にライターで火をつけて、ドラム缶の中に入れた行為に対し、建造物等以外放火罪(110条)が成立しないか。

まず、「焼損」とは、火が媒介物をはなれ目的物に移り、独立に燃焼を継続するに至った状態をいうところ、媒介物たる本件帳簿から日が漁網に移り、漁網が燃焼を継続するに至っていることから「焼損」が認められる。

次に、防波堤に駐車していた原動機付自転車に延焼する恐れが生じていることから「公共の危険を生じさせた」と言える。

もっとも甲は、周囲が暗かったため、魚網、原動機付自転車及び釣り人5名の存在をいずれも認識していなかった。したがって、公共の危険の発生の認識がなかったといえ、成立しないのではないか。公共の危険の発生の認識の要否が問題となる。

この点、110条が「よって」という文言を使用していることから、器物損壊罪の結果的加重犯であると解し、公共の認識は不要とする見解が存在する。しかし、非財産犯たる放火罪と 財産犯たる器物損壊罪との間に加重類型を見出すことは困難である。そもそも 110条は公共危険罪を構成するところ、かかる公共危険罪を構成するのは公共の危険を発生させたからに他ならない。したがって、不特定多数者が、生命身体に対する危険が生じたという認識たる公共の危険の発生の認識が必要であると解する。

本件においては ここは 漁網原動機付自転車及び釣り人ごめんの存在のいずれも認識していなかったことから公共の危険の発生の認識を欠いていたと言える。よって建造物等以外放火罪は成立しない。

3 乙の殺人行為を見逃した行為について、殺人犯の幇助(62条)が成立しないか。

まず見逃したという不作為が殺人罪の幇助たりうるか。

幇助とは実行行為以外の行為によって、正犯の実行行為を容易にすることをいうところ、不作為であっても、正犯の実行行為を容易にすることは可能であるから不作為も幇助たりうる。最も自由保障の見地から作為と構成要件的同価値性を有する必要があると解する。具体的には、法的作為義務の存在および作為の可能性・容易性が認められる必要があると解する。

本件では Xは甲の父であるところ、法律上の扶養義務が生じる。また、家には甲以外おらず、Xの生命は甲に排他的に依存していたといえる。したがって、法的作為義務の存在が認められる。次に、確かに、甲にとって容易に取り得る措置を講じた場合には乙の犯行を止める直ちに止めることは確実とまでは言えなかった。しかし 止めることができた可能性が ある以上、乙の行為を止めて、救急車を呼んだりしてXの手当てをすることは充分に可能であり容易であったといえる。よって、作為の可能性・容易性が認められる。

したがって、上記不作為も幇助たりうる。

もっとも、乙は 甲の存在を認識していなかったから、甲の行為は、乙の実行行為を、物理的にも精神的にも容易にしたとは言えない。よって、幇助にあたらない。したがって、甲に対し殺人罪の幇助は成立しない。

4 以上から甲に窃盗罪が成立し、甲はかかる在籍を負う。

 以上

(答案用紙3枚と1行。)

 

予想:C

不法両得の意思が迷ったが、盗み出した時点では、燃やす意思はなく毀棄・隠匿目的とはいえないから肯定しました。

甲の不作為の幇助については、客観的には199条の幇助だけど、主観的には201条の幇助なので抽象的事実の錯誤かなとおもったけど、片面的幇助で切ったので各場面はなかった。(ここは、絶対無理でしょ。)

上記幇助のことをかくために乙から先に書いた。もっと、事実を評価せんとあかんね。

個人的には可もなく不可もなくかなと思っているので、C評価はあると信じたい。