小説① 踏切
あるバイト帰りの日だった。
その日は雨もポツポツ降ってきたから急いで帰らないと…。そんなことを考えながらチャリを走らせていた。
僕が家に帰るためには踏切をひとつ通る必要があった。
そこはいわゆる「開かずの踏切」でひどい時には10分以上を待つことを余儀なくされるのである。
その日も例に漏れず、僕は「カンカンカンカン」とけたたましい音を鳴らす踏切の前でチャリを停車した。
周りには街灯もなく、踏切の赤い光とチャリのライトだけが光っている。
僕よりも先に女の子が踏切が開くのを待っていた。
高校生だろうか。髪は肩にかかる程度の長さで身長は150㎝程度。
セーラー服を着ていたので顔は見えなかったけれど僕はそう判断した。
「カンカンカンカン…。」
今日もなかなか開かないなあと僕はイライラしながら待っていた。
5分ほど待って踏切が開いた。
僕はチャリにまたがって踏切が開いたにも関わらずその場を動こうとしないその女子高生を追い抜いた。
僕はその女子高生の顔を見ようと思い少し振り返ってみた。
涙目で少し不思議そうな顔をしながらじっとこちらをみていた。
若干の気味悪さを感じたが、少し興味も沸いた。
なぜ泣いているのだろう…。
とっさにそんなことを思ってしまい、思わず僕は少女に声をかけた。
「どうして泣いているの?」
「えっ…?」
驚かしてしまったようだ。やめておけばよかったと後悔した。
少しの沈黙の後彼女がこう切り出した。
「2週間ほど前にここで事故が遭ったの。」
そしてポツリポツリと話し始めた。
「死亡事故だったの。その時は踏切の故障で音が鳴らなかったみたい。それで私の友達が電車が来ていることに気づかず踏切内に入ってしまって…。」
やっとの思いで振り絞ったような震えた声だった。
「だからここにいればその子の幽霊がいてまた会えるんじゃないかと思って。」
「そうなんだ…。でも君なら多分会えるんじゃないかな?」
「えっ…。どうしてわかるの?」
「…だって、君には僕が見えているから。」
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思いついたまま書いてみました。
特にホラー系にしたかったわけではないのですが、考え付いたのが夜だからですかね。