てんちゅーの備忘録

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適正手続とは程遠い世界【検事失格・市川寛】

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文系の最高峰の試験である司法試験をパスした者しかなることを許されない職業・検事。 

 

高校生ぐらいのときに木村拓哉さん主演の「HERO」というドラマを見て検事という職業に憧れを抱いていたことを思い出し手に取ってみました。

 

タイトルのインパクトが大きかったことも理由です。

 

 

1 概要

 

「ぶっ殺すぞ、お前!」。恫喝により冤罪を作り出してしまった元「暴言検事」の告白。検察庁の真実を描く衝撃のノンフィクション。

 

大学で学んだ刑事政策の「ダイバージョンの実践」という理想の検事像をもって入庁した著者。

この著者が様々な事件と向き合う中で理想と現実に苦しみ、遂には「暴言検事」として違法捜査に出てしまうまでの過程が描かれています。

 

この本はいわゆる「告発本」であり、検事という職業の内部を著者の検事生活を振り返りながら紹介していくという内容になっています。

 

著者の実体験から検察庁という組織がどのようなものであったかを垣間見ることができます。

 

また、検察庁の雰囲気と体質が著者を変えてしまったという点が特に強調され内容が進んでいきます。

 

「冤罪被害者」の方の本はよく見かけるように思いますが。「冤罪加害者」の視点から書かれた本はそう多くはないのではないでしょうか。

 

2 感想

 

私の中の理想の検事像がガラガラ音を立てて崩れていったような気がしました。

 

検察庁という組織の在り方を今一度この本を通じて考えさせられたように思います。

 

検察官は有罪がとれると思った事件しか起訴しない。

だからこそ「無罪判決」を恐れ、どんな手を使ってでも有罪にしようとする姿勢が求められるとのこと。

 

日本の刑事裁判での有罪率が99.9%と言われる所以も理解できるような気がします。

 

検察官はあくまで「真実発見・適正手続」という刑事訴訟法の理念を実質化するための機関であって、決して被疑者・被告人を有罪するための機関ではないと思ってます。

 

現場の検事の方も同様に考えているだろうと思っていた私が単に実務を知らなかったと言えばそれまでなのかもしれません。

 

しかし、これが検事の実態であるとするとゾッとしますね。

 

おかしいと感じてもそれを言うことが許されない組織。

特に「起訴状の偽造」というには目を疑いました。

 

そんなの誰から見てもあかんやろ…。と思うことが常態化していると考えると検察官に対する信頼というものは地に堕ちてしまったと言っても過言ではありません。

 

今日に至るまでには様々な検事の違法捜査が白日の下にさらされてきましたが、それらは氷山の一角にすぎず決して稀な事例ではないんだろうなあと思うようになりました。

 

 

3 まとめ

 

法曹志望者、特に検察官志望の方はぜひ読むべき本ではないかと思います。

 

これを読んで今一度自分の理想の検事像を考えてもらいたいですね。

 

比較的サクサクと読める割には内容が濃いものとなっています。

 

著者が暴言検事と言われる所以となった「佐賀市農協背任事件」の組合長の息子さんが書かれた本があるとのことなのでそちらも読んでみたいと思います。