てんちゅーの備忘録

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なぜ新卒一括採用は廃止されないのか。

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ここ数年は、経団連の内定解禁日がコロコロ変わるなど、新卒一括採用の限界が見え隠れしているような気がします。

 

なぜ、新卒一括採用は雇用形態として維持され、廃止されないのか。

 

メリット・デメリットを探ってみました。

 

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1 新卒一括採用とは

 

新卒一括採用とは、企業が大学卒業予定の学生(新卒者)を対象に年度毎に一括して求人し、在学中に採用試験を行って内定を出すことで卒業後すぐに勤務させるという雇用慣行のことを指します。

 

この新卒一括採用は世界で類をみない日本独特の雇用慣行だそうです。

 

例えばアメリカでは、企業の中で部署別に採用活動を行うのが一般的で、部署内のポジションが空いた場合その都度募集するという通年採用の仕組みがとられています。

 

新卒一括採用の原型導入されたのは明治時代のことで、本格的に広まったのは第一次世界大戦後の不況期のことだそうです。

 

当時、不況で採用希望者が企業に殺到したのをきっかけとして採用のための選抜制度が慣行化されました。

 

2 メリット

 

新卒一括採用のメリットとして

 

企業内において年齢別での組織構造を維持することができる

 

ということがまず挙げられます。

 

毎年一定の人数を雇うことでどの年代の人材も確保することができます。

 

これが成立する前提として終身雇用制度が関係しています。

 

定年まで誰もやめないからこの論理が成り立つのです。

 

バブル当時なんかであれば企業が倒産するなんてことは全く考えられておらず、サラリーマンが定年までに退職することを考えることもほとんどなかったでしょう。

 

また、採用してから企業内で人材を育てていくという方針であったことから

 

企業内の研修制度が充実する

 

というのも挙げられると思います。

 

日本の企業はいわゆる「総合職」として採用し採用後に配属先の部署が決まるというシステムが採られてます。

 

これは部署ごとに採用を決めるアメリカとは真逆の採用制度だといえます。

 

一から社員を教育していくことを前提としているので、何色にも染まっていない新卒の学生を採用するというのは企業にとっても都合がよく合理的なシステムということになります。

 

まっさらな新卒の学生であれば、愛社精神や企業への忠誠心を育てることができ、企業への定着率アップにつなげることもできます。

 

そして、一括採用された学生同士で「同期」という特別な連帯感が生まれます。

 

入庁した当時「同期を大切にしなさい。」という上司や先輩はとても多かったですし、実際わからない他部署の業務があればその部署にいる同期であればなんでも聞けるという雰囲気があったのも事実です。

 

 同時期に入庁したというだけで、なぜこんなにも連帯意識が生まれるのかと不思議に思ったこともありましたが、学校の「クラス」と同じようなものだと考えれば少し納得ができると思います。

 

このように新卒採用には一定のメリットがあると言えます。

 

 

3 デメリット

 

しかし、今や終身雇用制度は過去のものです。

 

今では少しずつ景気は回復し、採用活動は活発になってきていますが、長引く不況によって企業は採用を抑制し、大量のリストラをせざるを得なくなり、終身雇用制度は成立しなくなりました。

 

そうだとすれば、終身雇用制度を前提とする新卒一括採用ももはや合理性を失ってきていると言わざるをえないでしょう。

 

そして、人件費が削減される方向に向かうなか、社員の教育を十分に行うことができなくなってきました。

 

新卒として採用され、戦力として働けるようになるまでの教育コストはその企業の純粋な費用としてかかります。

 

社員の教育コストに資金をかけられなくなっているのです。

 

 

さらに、新卒一括制度によって、学生は大学卒業後すぐ働くことを余儀なくされています。

 

言い換えると、大学を卒業するまでに働いたこともないのに自分にあった仕事を選択しなければならないのです。

 

新卒でなければ入社できない大企業はまだたくさんあります。

 

そんな中、フリーターとしての道を選択する人も増えていますが、その後就職するには圧倒的に不利になるのが日本の現状です。

 

フリーターとして社会に出てみれば、企業を外側から見ることができます。

 

社会の多様化にあわせて企業にも多様化が求められる中、そういった企業の外側から見た意見も必要なのではないかと思います。

 

しかし、入り口を制限している結果、そういった意見を取り入れることができなくなるのです。

 

また、学生の間に仕事を決めなければならない結果、入社後に入社前のイメージと違うなどのミスマッチが起こる可能性が高まります。

 

ミスマッチが起きてしまうのは学生側にとって自分がしたい仕事ができず退職しなければならないという損失が起こりますし企業側にとっても採用コストが無駄になったという損失が起きてしまいます。

 

お互いに不幸にしかなりません。

 

日本では入社後転職することは会社に対する裏切り行為であるかのようにまだまだ「悪いこと」だと考える人は多いです。

 

そうだとすれば、入り口を整備する他ありません。

 

ミスマッチを防ぐために一度社会に出てから自分の適性を見極めることができるような制度があってもいいのではないかと思います。

 

卒業後インターンシップを10社受けないと企業の選考を受けられないとか。

 

世間を見回すと何でもできる「ゼネラリスト」よりも専門的な知識をたくさん有する「スペシャリスト」が求められている気がします。

 

現在の新卒一括採用では社内のどこに配属されても業務をこなせるような「ゼネラリスト」として教育されることが前提となっているため、この世間の流れにはそぐいません。

 

 

4 まとめ

 

新卒一括制度の功罪をご紹介しました。

 

一定のメリットが存在するため、新卒一括制度は廃止されず維持されているということがわかりました。

 

しかし、雇用のミスマッチが起こるということが存在する点で新卒一括採用を廃止するべきだと思っています。

 

本来、仕事というのは、生活するための「手段」であって、「目的」であってはならないのです。

 

お金を稼ぐだけの人生、週末を楽しみにするだけの人生の何が楽しいですか。

 

だから、仕事には「やりがい」がなくてはならないのです。

 

ミスマッチが起こるとそのような「やりがい」を奪われてしまいます。

 

新卒一括採用は長年採用されてきた雇用形態であり、今すぐ変更するというのは難しいと思いますが、もっと議論を活発していくべきではないかと思います。